Psyは投げられた

若手精神科医が有る事無い事色々つぶやきます。

コスプレをしたい気持ちはどこから来るのか

患者にコスプレイヤーがいる。

コスプレをして、どう言った楽しみがあるの?と聞くと

「私可愛い、っていう系の人もいるだろうけど、違うな。私は、変われる気がするから、好き。」

 

 

その患者は、やはり自傷を繰り返し、いつでも「死にたい」と言っている外傷系の子だ。

彼女は、コスプレをすると、調子が良さそうで、自傷行為をせずに済むことがある。

 

彼女は、そうか、変わりたいのだ。

今の自分でいるのが嫌で、変わりたいからコスプレをする。

今の自分でいるのが嫌で、変わりたいから、死にたいという。

 

その言葉を聞いて、すごくストンと腑に落ちた感じがした。

 

 

もちろんコスプレ好きのみんながみんな、そうではないだろう。

コスプレが非日常だ、というのもわかる。

しかし、彼女たちにとっての非日常は、ただ身なりを変えるだけではなく、いつもの苦しく自信がなく悔しい思いばかりする自分から抜け出す、生きる行為なのかもしれない。

コスプレが、彼女たちにとってのヨソモノ自己からの攻撃を避ける方法なのかもしれない。

 

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若い、精神科医にもならないおそらく学生の頃に、「リストカットをする女の子に薬を渡して、取り合えずしたくなったらこれを呑んでと出来るような薬があったら良いのに」とツイートしたことがあった。

後輩のイケメン君が、「リストカットするような女はかまってちゃんなんだから放っとかないといけないんだよ。わかってねぇな」と呼応していた。

しかし、男子校の同級生がリストカットしていたことを見ている自分としては、その言葉には賛同はできなかった。彼は構って欲しい、というよりは、自己の中に棲まう悪魔のような苦しさを吐き出そうと、腕を切っていたのだろう。

彼も、変わりたい、という気持ちだったのだろうか。

 

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低自尊心の状態では、「存在するだけで、他者より劣っていて、辛い、苦しい」という思いが膨らむ。自己存在を自身の中から傷つける「ヨソモノ自己」がいて、それを吐き出し納めるために、人は“行動化”するのだ。

全てその行動化が、リストカットでなく、コスプレになるのなら、おじさんはとても嬉しいのだが。