Psyは投げられた

若手精神科医が有る事無い事色々つぶやきます。

【メンタライゼーション】メンタライゼーションとマインドフルネスは感情の自己認識をトレーニングする方法である【BPD】【マインドフルネス】

 今週末は、外傷的育ちという概念を日本に導入し、その普及と治療に尽力されている崔先生の講演を聞いてきた。

 

メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服

メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服

 

 

外傷的育ちと愛着障害 - Psyは投げられた

僕の記事にも幾度も登場する外傷的育ち。本を読んでなかなか理解できないことや、読んだ上でさらに経験を積んで復習することで理解できる部分が増えてきた。

現在BPDのエビデンスある治療としては、DBT(弁証法的行動療法)が主たるもの、MBT(メンタライゼーションに基づく治療)が最近エビデンスを得て強くなりつつある、という状況であり。世界的にはDBTがかなり主流なのだが、DBTの中身は、ざっくりと言ってしまえば認知行動療法とマインドフルネスなのである。

最近マインドフルネスを集中的に学んだため、メンタライゼーションをみる目が少しはっきりしたというか、理解の幅と深さが変わった感じがする。そのまとめを簡単に記しておきたいと思う。

 

端的に言うと 「メンタライゼーション、マインドフルネス双方とも、スタイルは違うとはいえ、感情の自己認識をトレーニングする技法」と捉えられるという点だ。

 

 双方ともに、自分の感情について注意を向ける練習をする。メンタライゼーションの文脈では、主に振り返りを行いながら自分が対人関係様式の上で苦しみを感じた時の、その直前にあり感情調節不全に陥った原因となる心理について観察をする。治療者が、本人の問題のある対人関係パターンに陥った場面の話を聞き、何度もしつこく「そのタイミングではどんな感情だったんだろうか」と問いかけながら本人の制御不能な状態に陥った時に感情を理解し、認知が歪んでいればそこの自己修正を促進していく。

 マインドフルネスでも、自身の嫌な感覚を思い起こしながら、それがどのような身体的感覚につながっていくかを追体験することにより、自身の感情の表出のされ方を学習していく。その中で、感情や思考はうたかたの泡のような存在であり、一時の感情で突き動かされるのではなく、stop breath notice reflect respond という手順をへて感情への妥当な対応を理解していく。

 

 BPDのような病理化をしていないとしても、感情への対応技法は対人関係に影響を及ぼす。仕事でのパフォーマンスに大きな影響を及ぼす上で、マインドフルネスは職域や人材育成に適応性が良い。おそらくこれは変形させたマインドフルネスでも効用はあり、自己トレーニング法としてのマインドフルネス、対人支援の技法としてのメンタライゼーションと、うまく使い分けられそうである。