アダルトチルドレン まとめ
数記事に渡り、アダルトチルドレンについての周辺内容を書いてきたため、すこしまとめてみようと思う。
過去の記事については、”アダルトチルドレン“タグをクリックしていただければみることができます。
筆者の意見も所々混じるため、鵜呑みにはされませんように(笑)
・ アダルトチルドレンとは?
元来、アルコール依存症の親に生まれてきた子供達が、特有の苦しさを抱き、いきづらさを感じる現象がみられ、1970年代アメリカで使われ始めたことばだった。
アルコール依存症は子供にも伝播しやすいことが知られていた。アルコール依存家族から抜け出しても、その子供もなぜかアルコール依存になったり、あるいは配偶者やパートナーにアルコール依存、薬物依存の人を選びやすい。
この原因は以下のような機序が考えられている。アルコール依存者への対応で手一杯になっていた幼少期の家族の中で、自身の感情は二の次になってしまう生活を強いられていた。情緒的関心が向けられず、自分の感情や行動への優先度が低いために、自尊感情は低く、屈辱感を持つようになってしまう、というものだ。子供の頃同様、「誰かに必要とされること」で自尊心を保つという行動パターンを得る。結果、依存形成した人との共依存関係が出来上がってしまうのである。
そしてこのアダルトチルドレンという考えは援用され始める。つまり、アルコール以外にもギャンブル、薬物などの依存を持った親、あるいは虐待、身体的暴力を受けること、ワーカホリックで全く相手にしてもらえないネグレクト型などにもひろげられるようになった。日本では、精神科医の齋藤学によって、1990年代中盤からつかわれるようになる。意味の拡大がなされ、現在では「自分の生きづらさを親に起因させんとしている人」のことを広くとるようにもなっている。この広がりの大きさから、精神医学においては診断名として確立するものにはなっていない。
( しかし、精神医学の上でこの軸を知って患者を診るのと、知らずに診るのでは全くアプローチがかわる、というのが私の意見である。難治の抑うつで、常に希死念慮を持ち、時に幻聴も聞こえてくる、というような成人女性。ずっとうつの治療を受けても特に改善せず、引き継がれてきた。家庭環境とその育ち方を聴取してアダルトチルドレンの指摘を行い、ワークブックなどで自己理解を深めると、自身の抑うつ感の「納めどころ」が理解でき、感情を安定させることができるようになる。そういった症例をいくつか経験している。)
・アダルトチルドレンのパターン
私はアダルトチルドレンを「低自尊心病」として捉え直すとわかりやすいと考えている。
「自分の人生の意味がわからない」「生きていて何がしたいかわからない」「楽しいと思えない」「私を必要としてくれる人なんていない」「じぶんが死ぬのがなによりも解決策だ」という考え方が典型的。
人間関係の面でも「自分を好きだなんてしんじられない」「親密になりきれない」「私ごときが断るなんて、と思ってなんでもゆるしてしまう」など、距離感が取れなかったり、周囲との対立をさけるため、いじめや性的問題の標的になりやすい、という傾向もある。
自尊心が乏しく、自分の安全感securityを感じられない場合、どう行動をするか考えると
1. 自尊心を保つために埋め合わせる
2. 諦める(危険を避ける、安全を諦める)
3. 周りに合わせる(環境へアプローチし安全を確保しようとする)
のタイプ分けができる。
→ 非常に出来の良いヒーロー型(1,3) @完璧主義「いい子」「世話焼き」
→ 面倒見のよいケアギバー型(1) @ 共依存病理「いい子」「断れない」「世話焼き」
→ 反抗、問題を起こすことで注目を集める スケープゴート型(2) @問題行動 ボーダーライン特性 摂食障害病理など?
→ とにかく存在感を消すことで問題を回避するロストチャイルド型(2) @無関心 引きこもり 虚無
→ 周りをとりあえず笑かそうとして自己犠牲的に道化に徹するピエロ型(3) @世話焼き 多動傾向? 性的問題など
などが挙げられる。
・アダルトチルドレンの治療
カウンセリングやワークブックといった、心理精神療法アプローチが必要。
(精神療法に鈍感な精神科医もも多いことに留意。)
まずは、自分の感情をメタに見る訓練が必要。今自分はどういった感情を持っているのか、どういう考えから今の感情に至ったのか。その過程に何かおかしいところはなかったか、などの感情と思考のながれを追えるようになることが必要。(昨今は感情を観る方法 メンタライジングmentalizingを基礎としたmentalization-based therapyが境界性パーソナリティ障害の治療としてエビデンスを出している点も注目。)
自身の感情を整理し、自己否定に結びつきやすい思考過程になっていることを理解した上で、自己肯定感を上げる練習をする。たとえば、今日したよかったことをノートに書き留めるとか、自分を許せそうな点を確認するとか。
最終的には親から受けた被害意識を減らし、自己肯定感を生んで、生きていて良いと思えるようにすることがゴールとなる。
その中で、根本原因となる親を、自分自身の自立した人生から遠ざける事が往々にして必要となる。環境的にそれが難しい場合、治療は困難を極める。遠ざけても折に触れて連絡を取ってきたり、その結果発作的に苛立ちが強くなり症状が出てくるのもよくある話。そんな時に、自分の傾向を理解し、面談などで客観的に説明することで、自分の感情の出来上がり方を再確認し、メタの場所に自分を置くことで感情に巻き込まれることを逃れる、と言った状況が役に立つと考えられる。
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