Psyは投げられた

若手精神科医が有る事無い事色々つぶやきます。

人はどういうことに動機づけられるのか、という話。

僕は今、動機づけ面接という面接技法について勉強している。

 

ーーー動機づけ面接とはーーー

ミラー・ロルニックが開発した、変化への動機を強化する面接スタイル。

断酒、節酒の心理面接を行う心理士の会話を記録し、半年後の節酒率、断酒率を測定する。その中で、効果をもたらすことの出来た心理士の質問や答え方、およびその逆(効果がなかった人の方法を切り捨てる)から、「こういう話し方をすると良い」というテクニックを抽出した、実践的でエビデンスベースドな面接技法である(刻々と更新され続けている)

飲酒問題以外にも、減量、禁煙、服薬コンプライアンス、ギャンブルなどにも効果があることが実証されている。

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大学生の時代から、英語スピーチをかじっていた分(スピーチとは、弁舌によって聴衆を行動に駆り立てる技術である)、人間がどんな時に意思決定をしたり、行動変容したりするのか、非常に興味があった。

そして、精神科医になって、依存症領域での行動変容をどう促していくかにも、とても興味があったわけで、こういう技法を習得しようと勉強しているわけである。

 

人はどういう時にやる気になったり、どういう時に「エイや」と良い仕事ができるのだろう、というのが

面接技法は相手が必要で、練習するにも時間がかかる。現時点で心理学的にはどのような説が一般的なのか、ということを知るために、最近読んでいるのが、「モチベーション3.0」という本である。

 

すでに3年前の本で古いかもしれないが、昨今の多動力や、「やりたいことで生きていく」という風潮にもとても合致する論が書かれている、と感じている。

 

 

人間は

・生命維持のためのモチベーション1.0(食欲、性欲など)

・アメとムチのモチベーション2.0(報酬、懲罰)

の二つで今まで突き動かされてきた。実際、産業革命以降の世界はモチベーション2.0で発展してきた。

しかし、昨今のpcの発展、AIの発展によって、人間が担う仕事は7割が創作的な仕事、3割がルーティンワークのようなものになると言われている。

しかし、実は対象が創作的な仕事の場合、報酬が能率を下げてしまうことすらある、という実験結果が明らかになりつつある。

例えば、画家が自主作成した作品と、依頼されて作った作品をconcealして評論家に提示すると、依頼作品の方が独自性の面で悉く点数が低く酷評を受けるものである、とか

ちょっと頭をひねらないと出てこないなぞなぞ的課題解決の問題は、報酬があるのとないので、ある方が課題解決までの時間がかかってしまう、とか。

つまり、創作的で独創的である仕事は、報酬があることで「イキんで」しまい、報酬のせいでかえって質が落ちてしまう、ということなのだ。

 

さて、では創作的な仕事はどう環境設定するのが良いのか、どう動機づけるのが良いのか。

 

 

 そこの話を今から読んでいきます。