動機付け面接 第3版 第2章
MI-3 まとめ
第1部 MIとは何か
- 変化についての会話
- 動機付け面接のスピリット
- 動機付け面接の方法
MIの技法とスピリットには、歌詞と曲のような関係があり、根底のスピリットを理解しないと皮相なトリックとなってしまう。言葉のゲームにならないようにしなければならない。
4つのスピリット:パートナーシップ、受容、思いやり、引き出す
パートナーシップ
マグロのような受け身の人にするのはMIでない。人「に対して」人「にむけて 」ではなく、人「のために」人「と共に」行われる事である。その人自身が知っている事以上にその人のことを知っている人もいない。そのひとの能力を使いながら、社交ダンスを行うようにMIを進めていく。専門家の罠、つまりカウンセラーが全て知っていて、それを提供するのが仕事だ、という想定を捨てないといけない。
クライエントとカウンセラーの双方の願望を考慮し、二つの調和を図ることも意味する。「禁煙クリニック」に来る人なのだから、変化のアジェンダが設定されている事が多い。カウンセラーが自分自身の価値観とアジェンダについて意識し、正直であることが必要だ。しかし最終的には、カウンセラーの壇上からの訴えではなく、相手の目線から世界を見る事が必要である。
受容
これは、カウンセラーがクライエントの行為を承認、黙認する、というものではない。カウンセラーがどうこうというのは無関係である。Carl Rogersの仕事に源流がある、4つの側面を考える。
- 絶対的価値
己と別個の人間として特定の他者を受容し、生得的な権利としての価値を持つものとして他者に敬意を払う。ある人をありのままの姿で見て、その人として成長させてあげたいという気持ち。Menschenbild 人のありかた - 正確な共感
相手の目を通して世界をみようとする、内的視点への積極的な関心と理解の努力。個人的な意味からできあがったクライエントの内的世界を、あたかもカウンセラー自身のものであるかのように感じながら、しかし「あたかも」という性質を失わずに感じる - 自律性のサポート
自分の方向を決める能力と権利を尊重する。ロジャースは性善説てきで、治療条件を与えられれば、人々は自然とポジティブな方向に成長するという仮定を持っている。逆は強制してコントロールしようとする試み。誰かを束縛しようとすることは、心理的な反動や、自由を主張しようとする願望を誘う。 - 是認
相手の強みと努力を探して承認すること。相手の悪いところを探して焦点化して治しかたを教える、というのは逆である。
思いやり
思いやりは、相手の福祉を積極的に増進すること。他者の福祉と最善の利益に意図的なコミットをすること。
自分の利益には興味を示さない、という事が大切である。
引き出す
なにかが欠けていて、それを補う、というものではなく、強みにフォーカスを当てるアプローチをとる。必要なものはあなたが持っていて、それを一緒に発見しましょう、というスタンス。相手の内部に知恵と経験の深い井戸があり、カウンセラーはそこから汲み出す事だ、という立場をとる。
これらのスピリットが自動的になる、まで実践を続けるのみである。焦ることはない。
ーーー感想ーーー
動機付け面接の勉強でまずはOARSのような基本技能を優先して勉強しがちだが、ふとするとこういう根本精神が抜け落ちる事が多い。しかし、これだけを最初に聞いても今ひとつ理解しきれないことも多い。技術を習い、苦悶して、そして始めてこのスピリットに共感し、じぶんの臨床をみなおすことができる、そんなセッションである。
PACEに代表されるスピリットを、いかに学習者に伝えるかは難しい。だからこそ自分がしっかりとりかいして、それを実践できるようになっておかないといけない。