Psyは投げられた

若手精神科医が有る事無い事色々つぶやきます。

動機付け面接 第3版 第1章

動機付け面接(motivational interviewing : MI) は、ミラーとロルニックによって創生された面接スタイルである。

変化への動機と、変化への抵抗を理解し、そのバランスを変化させながら好ましい行動へと変化させていく来談者中心面接技法である。

エビデンスに乗っとった技法の更新がされていくのがこの技法の特徴で、第3版に当たるMI3が2013年に上梓、日本語版が遅れてこの2月に出版された。

私もこの面接技法を勉強するものであり、MI3をすぐに購入、読み始めているところである。

 

このシリーズでは、MI3について、章ごとにキーワードをピックアップし、私が理解を深める一方で、当ブログの読者にもMIの片鱗を理解してもらったり、MIを学習したいという想いを広げてもらったりするのが狙いである(そして枯渇しがちなブログネタをシリーズものにして広げるためのツールでもある。)

 

 

MI-3 まとめ

 第1部 MIとは何か

  1. 変化についての会話
  2. 動機付け面接のスピリット
  3. 動機付け面接の方法

 

  日常の会話でも、お願い事をするときは会話内でのためらい、やる気、コミットメントに注意を払ってサインを探す。言語には情報伝達以外に動機付けが主な役割としてある。

  カウンセラー、聖職者、心理学者、教師などは変化を求める人が助けをもとめる専門家である。そして、医療の場でも慢性疾患がメインであり、医者、看護師、栄養士などもライフスタイルを変えるための会話を日々の仕事の中でしている。

  行動のみでなく、「許し」のような心理的変化もMIのフォーカスとして組み入れている。

  援助者が変化の方向へ動機付ける際の課題を乗り越える建設的な方法を探し、自身の価値や関心に沿った方向に自分で変化させるような会話のアレンジをおこなう技術がMIである。言葉が態度を変化させることもあるのだ。

 

ースタイル:

 指示と追従は対極にあるコミュニケーションスタイルで、MIはこの中間にあるガイドのスタイルである。導く際には、手伝い過ぎても良くないし、手助けが少な過ぎても難しい。

ー間違い指摘反射

 人のために生きるために、多大な利他心を持って、他者にポジティブな変化を起こしたい、と思うほどに、「指示的スタイル」をとりすぎる事がある。人を変える上で害になることすらある。「こっちに正しい道がある」と間違いを指摘したくなる気持ちを「間違い指摘反射」と呼ぶ。

ー両価性

 変わりたくもあり、しかし今のままでいたい、という気持ちもある。人間として当たり前の気持ちである。そしてこの両価的な状態こそが変化への道で立ち往生する1番の場所である。 禁煙、飲酒、運動、貯蓄、リサイクル、いずれにしてもどれだけでもプラス面をかたれるが、誘惑に負けてしまう。人類の宿命である。変化に向かう発言のチェンジトークと現状維持をする維持トークが織り混ざった発言が多い。 

  両価的な状態にある人の中では、変化への賛成論も、反対論も、最初から住み着いている。「あなたの飲酒は問題だから断酒しましょう」といっても、「はい、断酒します」とはならず、「酒をやめるつもりはありません」となる。治療者が「変化すべき」と論じても、クライエントがそれに反論しているのであれば、治療者の狙いとは逆行していると言わざるを得ない。両価的になっている際に人間はその話題に敏感になっているのだから、間違い指摘反射と指示のスタイルだと、どうしても対抗的な会話スタイルになってしまう。

ー変化の会話のダイナミクス

  間違い指摘反射には、「説得して納得させる」というスタイルが伴う。嗜癖問題を持つ人は現実認識能力が落ちている、という前提に立つとこういった指摘反射が必要になる。結果抵抗に対してさらにボリュームをあげることとなっていた。クライエントは防衛的で否認状態になっていく。当初の目的と真逆に進む。

  間違い指摘反射を前面に出して、「説得して納得させる」つもりで話しかけると、援助された側は決まって「怒り、防衛、不快、無力感」を感じる。そして「変化を望んでいない」と感じてしまうのだ。

  助言を与えず、「あなたはなぜ、この変化を望むのか」などの変化に関しての質問を聞くだけにしてみる(実際には5問ある)。すると、「関わりができた、やる気がでた、オープンに感じた、理解してもらえた」という気持ちになったようだ。この違いは、会話の力動のみによっておきている。

 

 

ーはじめの定義

 上記よりMIを定義すると

「動機付け面接は、協働的なスタイルの会話によって、その人自身が変わるための動機付けとコミットメントを強める方法である」という一般的なまとめかたができる。主目的は変化への「本人自身の動機」を強化することである。

 

 

ーーー感想ーーー

 間違い指摘反射、およびこれによる反応を予想させることは、MIの導入にとてもよい。

 しかし自身が冷静になりきれていないと、実際にこの間違い指摘反射をいくらも行ってしまう。

 わかっているようで、なかなか「しっくりとした理解」ができないMIの定義を、再認識する上で再読した事がとても良かった。