Psyは投げられた

若手精神科医が有る事無い事色々つぶやきます。

友人に妹を猛プッシュされるはなし

僕には悪友がいる。研修医時代の同期で、今は関東に移り院生をしている。

知識欲は強く、博学で、そして変態だ。好きなものにはとことん、タイプの変態だ。

私生活さながら、頭の中も乱れて混沌としている彼が好きだ。

 

彼は事あるごとに「妹と結婚してやってくれ」とプッシュしてくる。

彼の妹だから、やっぱり変態なのだろうか。翻ってまともなのだろうか。

 

 

ギャグにせよ、ジョークにせよ、「うちの娘でもどうだい」とか、「妹をどうだい」と言われるのは、自分の人格が肯定されているようで若干嬉しくなる。(人格ではなく、資産や将来性を評価されている可能性もあるが)しかし当人から「私どうですか」といわれることはない。遠い昔からそうだった。

 

 

幼稚園児の頃から、僕は「マダムキラー」を自称していた。

自分の同級生の、母世代、年上世代にモテるのだ。

むかしから古いテレビネタや自分よりも年上が見聞きしている媒体の情報を手に入れていたからかもしれない。なんで君の世代がそんなことをしっているのだ、というねたを織り交ぜてはなしをするからだったのだろうか、とにかく年上、親御さんからモテた。

 

男子からも基本モテた。中高ではそれなりに輪の中心にいたし、友人も多かった。先輩にいじられることもあったが、基本敵を作らないタイプで、よく可愛がってもらった。

 

しかし、同年代、あるいは年下の女性からモテたことは今までなかった。一度もなかった。

理由はわからない。隣近所の男性陣は同級生や後輩の彼女を作る中、なかなかそういう対象に見てもらえなかった。

「憧れの先輩」とか、「気になる同級生」とか、そういう対象になりたかった。僕だって、交差点でぶつかった女の子と二人乗りして土手にはまったり、部活の後にタオルを渡して欲しかった。いや、大学は運動部じゃなかったから、例えば他人のスピーチを夜な夜な推敲している中、後ろからアイスを首筋に当てられて、つめた!あーもう、やめろよ、集中が途切れるだろ、んーもう、仕方ないなぁ、とか甘いそんなこんなが欲しかった。

 

なぜだ、何を間違ったんだ。やはり髪の毛が長い文化系だったのがよくなかったのか。短髪でテニスをしている爽やか系なら良かったのか。あるいはバンドマンでもしていたらロン毛文化系でも良かったのか。ソロギターしか弾かないのが悪かったのか!

 

 

そういえば、むかしから「君って変態だよね」といわれることが多かった。同年代以下には。

僕のどこが変態なんだ?といつも聞き返すことにしていた。それに納得のいく返答をしてくれたものはいなかった。

僕の周りには変態、突出した才能をもつ奇才が大量にいた。誰でも自分より素晴らしい能力をもっていたし、それを常に羨望しながら僕は生きてきた。変態になりたかった、といっても過言じゃない。

だから、僕が変態だと言われると、僕は戸惑う。なぜだい?僕よりもっと変な人はたくさんいるし、なんなら僕はみんなの平均でしかないじゃないか。突出しない凡庸の塊なのに、何を持って変態というのだい?

この答えをいつも求めつつ、偏差への欲望から、精神科という領域を選んだとも、言えるかもしれない。

 

 

変態と言われつつ、自分を変態と認められないこのような人間に、明らかに変態な友人の妹が勧められんとしている。僕は、彼にジェラシーをかんじつつ、これから生きていかないといけないのか?変態の義兄に悔しさを感じながら、変態でない自分に苦しみながら残りの人生を生きねばならないのか?それはあまりにも過酷ではないか?友人は私の葛藤と苦しみを知って、その提案をしているのか?このにっくきサディストめ!絶望を持って精神を診る者となった私に、さらに望みを奪い、自己嫌悪のシャワーを浴びせようと言うのか!ちくしょう!そういう罠か!