Psyは投げられた

若手精神科医が有る事無い事色々つぶやきます。

でんきはじめ

今日は仕事始め。

仕事始めは8時半から2人外来をみて、9じから電気けいれん療法。

 

電気けいれん療法を1人でかけられるようになってから、少し自分の中で武器を得たような感じがしている。

統合失調症うつ病などの難治例に対して効果を示すことの多い電気けいれん療法は、今や精神科医療になくてはならない治療法である。過去は懲罰的な治療の印象があったが、現在は手術室で安全に、無痛で行う治療が主流である。

 

今日かけたのは、10月に入院してきた慢性期統合失調症の患者。年々薬を増やされ、家からも出てこれず、往診に月1で通っていた。しかし、増薬の効果に乏しく、とうとう家の階段から飛び降りようとしたり、水を撒き散らし始めたりと、危ない行動が増えてきた。已む無くいろんな支援者が集まって家から連れ出してきてくれた。

宇宙がどうとか、ひふみ神示がどうとか、これぞ解体、まとまりのない発言!と典型的な統合失調症、というイメージ。CP換算で2500程度(統合失調症の薬の量を測る数値。普通は600ー800程度までで増量をやめる)と薬ももりもりになっていたため、「こりゃ電気だな」となった。

精神運動興奮が強くて、術前の血管精査をするために鎮静をかけるものの、ドルミカムを5本いっても眠らない。しかたないからプロポフォールを入れると呼吸抑制がいきなりかかり、マスク換気をしながら頭の画像をとった思い出の症例。

3回の電気けいれん療法後から妄想がかなり軽快、「あの、僕すごくくだらないことにこだわっていましたよね」と妄想的な訴えを訂正し始めた。減薬もすすみ、デポ剤への移行も考慮して変薬を進めている症例だ。

(プライバシー保護のために一部改変しています)

 

こういうタイプのひと(鎮静をかけようとベンゾを大量にいっても寝ないような精神運動興奮)には、電気がよく効く印象だ。大学病院にいた時も、保護室内で大暴れして、壁紙をたべたり床紙を「髪の毛をくくるのだ」と言って破りゴムにしていたような女性(最終的には衣服も全部破るため全裸になっていた)も、鎮静にロヒプノールが全く効かず、プロポフォールで鎮静して検査にいった覚えがある(その時の覚えがあったから、今回もベンゾが効かない時の次の手にプロポフォールを使えた)。この人も3回ほどで、すっと、普通の疎通に戻り、10回かけない間に終了できた症例だった。

緊張病に対してベンゾチャレンジをすることもあるが、滅裂で精神運動興奮著しい患者に対して、ベンゾチャレンジを行い、「効かない」という兆候は、もしかすると電気がバッチリ効くサインになるかも?なんて考えている。

 

 

往診クリニックもいいけど、電気クリニックも、いいなぁ。